スクロール型ウィンドウマネージャーとは?定義、タイル型との違い、すべての選択肢
スクロール型(スクロール型タイリング )のウィンドウマネージャーは、ウィンドウを詰め直されるグリッドではなく、果てしなく続く横長のストリップに並べ、それをスクロールして使います。このページでは、その定義、タイル型やフローティング型との違い、生まれた経緯、そしてLinux、Windows、macOSでそれぞれ何を使えばいいか を解説します。
2026年11月更新 · 約10分
定義
スクロール型ウィンドウマネージャー (スクロール型タイリング とも呼ばれます)は、ウィンドウを列として横に並べ、画面の端より先まで果てしなく続く横長のストリップに配置します。ウィンドウを開くと、フォーカスしている列の隣に列が1つ加わるだけで、ほかのウィンドウがリサイズされることはありません。ウィンドウ間の移動は、キー、トラックパッド、マウスでストリップをスクロールして行います。
ひと目でわかる考え方
長い机の上を横に移動していくカメラを思い浮かべてください。どのウィンドウも机の上に決まった場所があり、モニターはその一部を映すビューポートです。別のウィンドウを見たいときは、カメラが横にスライドするだけで、机の上のものが動いたり縮んだりすることはありません。モデルはこれだけで、ここから2つの性質が生まれます。
ウィンドウのサイズが変わらない。 ストリップに並ぶウィンドウが2枚でも20枚でも、ウィンドウの幅は自分で決めたままです。
新しいウィンドウを開いても配置が詰め直されない。 アプリを開くと、今いる列の隣に列が挿入されます。ほかは何も動きません。
niriのREADMEは、これを一文で表しています。ウィンドウは右方向へ無限に続くストリップ上に列として並び、「opening a new window never causes existing windows to resize」(新しいウィンドウを開いても、既存のウィンドウがリサイズされることはない)。
スクロール型、タイル型、フローティング型の違い
3つとも、ウィンドウをどこに置くかを決める方式です。違いは、誰が決めるのか、そして画面が足りなくなったときに何が起こるかです。
フローティング型(重ね合わせ) タイル型(グリッド/BSP) スクロール型(ストリップ)
ウィンドウを配置するのは 自分の手で ウィンドウマネージャー ウィンドウマネージャー
重なり 自由に重なる 重ならない 重ならない
ウィンドウの置き場所 画面上のどこでも 常に見えている画面の中 画面の端より先まで続くストリップ上
新しいウィンドウを開くと ほかのウィンドウの上に重なる 画面上のすべてのウィンドウが小さくなる 新しい列が現れるだけで、ほかはリサイズされない
ウィンドウを10枚開くと 掘り返して探す山になる 小さなタイルが10枚、またはワークスペースに分散 快適なサイズの列が10本、スクロールひとつの距離に
移動方法 クリック、Alt/⌘-Tab グリッド内で上下左右にフォーカス移動 ストリップをスクロール(キー、トラックパッド、ホイール)
得意なこと 気軽な作業、重ねて使うパレット 多くのウィンドウを一度に見る 1〜2枚のウィンドウに集中しつつ、残りもすぐ近くに
例 標準のWindows、macOS、GNOME、KDE i3、sway、Hyprland(dwindle)、yabai、AeroSpace、Amethyst、GlazeWM niri、PaperWM、Karousel、ChainYourMac、OmniWM
スクロール型は、サイズ固定という制約を外したタイル型 と考えるとわかりやすいでしょう。従来のタイル型は、すべてを見えている画面に収める必要があるため、新しいウィンドウはほかのウィンドウからスペースを奪います。このルールをなくすと、レイアウトは分割される代わりに横へ伸びていきます。「すべてを一度に見る」ことはできなくなりますが、知らないうちに変わることのないレイアウトが手に入ります。Macでの詳しい比較はvs yabai 、vs AeroSpace 、スナップ系ツールについてはvs Rectangle (いずれも英語)をご覧ください。
OS別・主なスクロール型ウィンドウマネージャー
2026年10月6日時点で、各プロジェクトのリポジトリで確認した内容です。この分野はバージョンの更新が速いので、リンク先は公式ページにしています。
名前 OS/環境 概要 ライセンス/価格
niri Linux(Wayland) Rust製の独立したスクロール型タイリングのコンポジター。v26.04 GPL-3.0、無料
PaperWM Linux(GNOME Shell) GNOMEの拡張機能。このモデルの先駆け GPL-3.0、無料
Hyprlandのスクロール型レイアウト Linux(Wayland) v0.54(2026年2月)から、dwindleやmasterと並ぶ内蔵レイアウト BSD-3-Clause、無料
Karousel Linux(KDE Plasma) KWinスクリプト。READMEによると、複数画面にはまだ非対応 GPL-3.0、無料
scroll Linux(swayのフォーク) PaperWM風のレイアウトを備えたsway MIT、無料
mango Linux(Wayland) dwm風のコンポジター。複数のレイアウトの1つに「scroller」がある 無料
komorebi Windows v0.1.38(2025年9月)からスクロール型レイアウトを備えたタイル型WM 個人利用は無料、仕事での利用は有料
ChainYourMac macOS 13以降(Appleシリコン) スクロール型専用のネイティブアプリ。Rust製エンジン、SwiftUI製の設定 $19.99(買い切り)
OmniWM macOS 26以降(Appleシリコン) ワークスペースごとにniri風スクロールかDwindleを選べる GPL-2.0、無料
PaperWM.spoon macOS(Hammerspoon) PaperWMをLuaで再現したもの MIT、無料
komorebi for Mac macOS スクロール型レイアウトを挙げている初期段階の移植版(v0.1.x) 個人利用は無料、仕事での利用は有料
同じ系統のものには、ほかにpapersway (sway/i3の上でスクロール型タイリングを実現するもの。niriのREADMEに掲載)と、Nehir (macOS向けOmniWMのスクロール専用フォーク)があります。Cardboard は初期のスクロール型Waylandコンポジターでしたが、2023年から開発が止まっています。Hyprlandのプラグインhyprscroller は、Hyprlandにレイアウトが内蔵されたため、現在はアーカイブされています。
ここで実際に操作できます。動画ではなく、本物どおりに動くChainYourMacの模型です。
ターミナル
~/project ❯ git statusOn branch main nothing to commit ~/project ❯ cargo testrunning 42 tests test result: ok ~/project ❯
← 左へフォーカス
→ 右へフォーカス
⇧ ← 左へ移動
⇧ → 右へ移動
R 幅を切り替え
F 全幅
C 中央へ
] スタック
⇧ ] 取り出す
⇧ T タブ
フォーカス枠
非アクティブを暗く
動画ではなく、実際に動くChainYourMacの模型です。タイトルバーをドラッグして並べ替え、Dockのアイコンをクリックしてアプリを開き、赤いボタンでウィンドウを閉じられます。実際のアプリでは、各キーと一緒に ⌃ ⌥ を押します。このデモはどちらの押し方にも反応します。
ChainYourMacのイメージ:ウィンドウは、画面の端を越えて続くストリップの上に横並びで配置されます。ライブデモを使うにはJavaScriptを有効にしてください。
Appleの公証済み
Developer IDで署名
アカウント不要、アプリからの利用データ送信なし
必要な権限はアクセシビリティのみ
自動アップデート
短い歴史
このモデルを広めたのは、GitHubのリポジトリが2017年にさかのぼるGNOME Shellの拡張機能、PaperWM です。名前は、ウィンドウが1本の長い紙の上に並ぶ「paper」のたとえに由来しています。長年にわたってGNOMEユーザーに愛されてきたニッチなツールで、今も最新のGNOMEに追従しています。
2023年、niri が登場しました。スクロール型タイリングを中核に据え、Rustでゼロから書かれたWaylandコンポジターです。最初のリリースは2023年11月、v0.1.0は2024年1月でした。READMEには「heavily inspired by PaperWM」(PaperWMに大きな影響を受けた)とあり、作られた動機の1つはモニターをきちんと分けることだったと書かれています。GNOMEの拡張機能では、Shellと格闘しなければ実現できないことです。niriの完成度の高さによって、「スクロール型ウィンドウマネージャー」は1つの拡張機能の個性から、1つのカテゴリーになりました。同じ年にはKarouselがこの考え方をKDEに持ち込んでいます(2つの元祖の違いはniri vs PaperWM をご覧ください)。
2025年からは、主要なタイル型WMにもこの考え方が広がりました。Windowsのkomorebiは2025年9月にスクロール型レイアウトを追加し、Hyprland はv0.54(2026年2月)でスクロールを内蔵レイアウトにし、swayユーザーにはscroll フォークが登場しました。macOSでは、Hammerspoonのスクリプト(PaperWM.spoon ・英語)と、ネイティブアプリがこれを実現しています。「niri wasn't for Mac, so I made one」(niriはMac用じゃなかったので、自分で作った)という一言から始まったChainYourMac と、macOS 26 Tahoe向けのオープンソースOmniWM (英語)です。
基本の操作
どのスクロール型ウィンドウマネージャーも、同じ少数の操作で成り立っています。
左/右へフォーカス移動 :ストリップを歩くように移動し、フォーカスした列が画面内にスライドしてきます。
左/右へ移動 :何もリサイズせずに列を並べ替えます。
プリセット幅 :あらかじめ決めたサイズ(3分の1、半分、3分の2)を順番に切り替えます。端をちまちまドラッグする必要がなくなります。
最大化/中央寄せ :フォーカスしている列を全幅にするか、中央に寄せます。
取り込み/追い出し(consume / expel) :複数のウィンドウを1つの列にまとめたり、列から取り出したりします。列をタブとして表示できる実装もあります。
スクロールジェスチャー :トラックパッドの横スワイプでストリップをドラッグします。「スクロール」をいちばん文字どおりに感じられる操作です。
レイアウトツリーも、分割方向を考える必要もありません。ストリップがデータ構造のすべてです。niriのキーバインドに慣れているなら、Macでの対応表 (英語)をご覧ください。
好まれる理由と、向いていない人
配置が詰め直されない。 グリッド型のタイル型では、ターミナルを開いただけで、考えごとの最中にエディターが縮んでしまうことがあります。ストリップなら、レイアウトは仕組みとして安定しています。
空間で覚えられる。 ストリップには地理があります。左端にメモ、真ん中にエディター、右にブラウザ、という具合です。
ノートパソコン向き。 13インチの画面で5枚のウィンドウをグリッドに並べると、5枚とも使いものになりません。ストリップなら快適なサイズで1〜2枚を表示し、残りはスワイプひとつの距離に置いておけます(小さな画面 ・英語)。
ウルトラワイド向き。 34インチや49インチのモニターに3〜4本の列を並べられ、どれも不自然に横長になりません(ウルトラワイド ・英語)。
正直に言えば、6枚のウィンドウを固定のダッシュボードとして同時に見る必要がある仕事(監視、トレード、サポート対応など)なら、グリッド型のタイル型のほうが向いています。スクロール型が最適化しているのは、残りにすぐ手が届く状態での集中作業であって、同時に見える量の最大化ではありません。
結局どれを使うべき?
Linuxなら
Waylandのデスクトップを自分で組むなら: niri。基準となる実装です。
GNOMEに満足しているなら: PaperWM。KDE Plasmaなら: Karousel(Macの場合はKarousel for Mac ・英語)。
すでにHyprlandかswayを使っているなら: Hyprlandをスクロール型レイアウトに切り替えるか、swayのscrollフォークを試せば、ほかの環境はそのまま使えます。
Windowsなら
komorebiのスクロール型レイアウトが定番の選択肢です。仕事で使う場合はライセンスを確認してください。
macOSなら
Macをお使いですか?ストリップの動きを、ご自分の画面で。
ChainYourMacは、スクロール型タイリングをmacOS 13以降のネイティブアプリとして提供します。Rust製のエンジン、指の動きについてくるトラックパッドスワイプ、そしてGUIでの設定。
ChainYourMacを購入 — $19.99
買い切り · アップデートはずっと無料 · macOS 13以降(Appleシリコン)
よくある質問
スクロール型ウィンドウマネージャーとは何ですか?
ウィンドウを列として横に並べ、画面の端より先まで続くストリップ上に配置するウィンドウマネージャーです。ウィンドウを開くと列が1つ増えるだけで、ほかのウィンドウはリサイズされません。ウィンドウ間の移動は、キーボード、トラックパッド、マウスでストリップをスクロールして行います。スクロール型タイリング(scrollable tiling)とも呼ばれます。
スクロール型ウィンドウマネージャーとタイル型ウィンドウマネージャーは同じものですか?
タイル型ウィンドウマネージャーの一種ですが、大きな違いが1つあります。どちらもウィンドウを重ならないよう自動で配置しますが、従来のタイル型(グリッド、BSP、マスタースタック)はすべてのウィンドウを見えている画面の中に収めるため、新しいウィンドウを開くたびにほかのウィンドウが小さくなります。スクロール型はレイアウトを画面の外へ横に伸ばせるので、ウィンドウのサイズは変わりません。
最初のスクロール型ウィンドウマネージャーは何ですか?
GitHubのリポジトリが2017年にさかのぼるGNOME Shellの拡張機能、PaperWMが、初期の実装として最もよく知られています。niriのREADMEでも、影響を受けたものとして名前が挙げられています。その後2023年にniriが登場し、Linuxでこの言葉を一気に広めました。
Windows用のスクロール型ウィンドウマネージャーはありますか?
あります。komorebiがv0.1.38(2025年9月)でスクロール型のレイアウトを追加しました。komorebiは個人利用なら無料ですが、仕事で使うには有料の商用ライセンスが必要です。GlazeWMにはスクロール型のレイアウトは見当たりませんでした。
Linuxでいちばんおすすめのスクロール型ウィンドウマネージャーは?
Waylandのデスクトップを自分で組むならniri。GNOMEならPaperWM。KDE PlasmaならKarousel。すでにHyprlandを使っているなら内蔵のスクロール型レイアウト、swayを使っているならscrollフォークがおすすめです。上の表もご覧ください。
Macでいちばんおすすめのスクロール型ウィンドウマネージャーは?
スクロール型タイリングは複数のモニターで使えますか?
はい。ほとんどの実装では、ディスプレイごとに独立したストリップを持ちます。niriもChainYourMacもこの方式です。なお、KarouselのREADMEには、まだ複数の画面には対応していないと書かれています。
なぜグリッド型のタイリングよりスクロール型が好まれるのですか?
知らないうちにウィンドウのサイズが変わることがなく、左から右へ並ぶストリップは空間的な記憶とよく合い、ノートパソコンの小さな画面(窮屈な5枚ではなく、快適な1〜2枚)でもウルトラワイドモニターでも使いやすいからです。